URBAN FOLKLORE   

08


家に帰って、夕飯を食べて、お風呂に入って、課題をやって、ベットに倒れ込む。
6月だから部屋着に半袖を用意したけど、少し肌寒い。
布団をかぶって、烏野男子バレー部マネージャーをやることについて考えてみる。
見学をしようと決めた時から、余程のことがないかぎりやろうと決めていた。
月島がいたっていうちょっとした事件はあったけど、それ以上に、とてもいい雰囲気であったり、天才セッターがいたり、何よりこれからの成長が気になる。

だけど、まだ悩んでいるのはこの腕のこと。
本当は、治るかもしれないのだ。この腕は。
安静期間が数ヶ月と治るまでのリハビリ、少しのブランクができるだけで、また強豪高に転校してバレーを続けても良かった。
また同じような目に合うかもしれない恐怖をかかえてバレーの道を進むか、バレーをきっぱりと諦めるか、
この選択はどちらを選ぶのも勇気がいるものだった。
そして選んだのは後者。
元々両親が宮城への引っ越しを勧めていたこともあり、私が宮城へ行くことを決めると考え直す暇などなく、すごい速さで物事が進んでいった。
転校手続きが完了したと両親が教えてくれた時は、もう戻れないのだと改めて思い知らされた。

こんな心境で転校した矢先、誘われたバレー部マネージャー。
やらない理由はないのだけど、予想外に面白いチームだったから、つまり、やりたくなってしまったのだ。バレーを。
強い所でプレイしないと意味がない、どこかでそう思っている自分がいた。馬鹿みたいだ。
烏野男子バレー部を見て思った。
これから強くなればいいのだから。



結局その日は決めることができず、次の日も見学に行かせてもらった。
仁花ちゃんもやるかやらないか、迷っている様子で清水先輩や日向くんと色々話しているみたいだった。
特に何もなく終了した練習後、ウシワカさんとやらの話題になり見せてもらったウシワカさんの画像を確認して、
この人、雑誌で見たことあるなーなんて思っていたら日向くんが仁花ちゃんを凄い勢いで連れ去っていった。
連れ去る前の会話を聞いていなかったのでただ唖然としていると、珍しく月島が話かけてきた。

はやるの?やらないの?マネージャー。」

月島から聞いてくるなんて、思ってもいなかったので目を見開いて驚くと、目を細めて睨まれた。
私は目をそらして、つぶやくように答える。

「迷ってる。」

「・・・・・・。」

「マネージャーをやるか、バレーをやるか。」

「は?バレー?怪我は?」

「今はまだ無理だけど、もう少し真剣にリハビリをすれば、一ヶ月後にはトスができるようになる可能性が高いの。
みんなのバレー見てたら、またやりたくなっちゃって。」

「・・・・・・ふーん。」

自分から聞いておいてそれだけ言うと、怪訝な私を横目に月島は行ってしまった。

テストが近いので部活も早めに終わる。
本当は私も勉強しなければならないんだけど、この日はそのまま駅へ向かい電車に乗り、病院へ向かった。

これでも多少リハビリは頑張っていたつもりだ。
バレー云々の前に、右腕の自由がきかないのは不便だから。
最初は肩から上にあげることすらできなかった腕も、ゆっくりとならあげられるようになり、
治っていることは実感できていたため、このままいけばすぐ良くなるよ、なんてそんな答えを期待していた。


それなりに人がいた病院で少し待った後、持っていた番号札が呼ばれた私は一通りの検査を受けて、何やらカルテっぽいものを書いている先生に訪ねた。

「どうでしょうか、近い内に完治しますか?」

私の質問を聞いた先生は、んーと言って持っていたペンで首の後ろを掻いて気まずそうな顔でこちらを向き、こう言った。

「これは、ちょっとまずいことになっているかもね。」