URBAN FOLKLORE   

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「あっ僕もう上がるんで失礼しまーす」

「え”っ」

「何?!」

「ブロック無しでスパイク練習しても意味ないんだよー頼むよー」

「何で僕なんですか梟谷の人は――」

「木兎さんのスパイク練際限ないから皆早々に逃げるんだよ・・・って、君。」

「えっ、わ、私ですか?」

今後ろから来た人、梟谷のセッターの・・・私を見てたって人だ。
数秒じーっと見られたあと一瞬目を細めて「なんでもないッス」と言って行ってしまった。

「???」

「まぁ兎に角さ、俺はコイツ鍛えるのに忙しいんだよね。」

「だからっ俺がブロック跳びますってば!」

「うるせぇ音駒でレギュラー入ってたかったらまずそれなりのレシーブ力つけろ」

「うぐぅ・・・」

「見えないかもしんないけど、コイツ全国で5本の指に入るくらいのスパイカーだから練習になると思うよ。」

知ってる、木兎光太郎さん。
有名なスパイカーだ。
私はこれまでも話をしたことも顏を合わせたこともないけど、
いつもテンションが高くてちょっと面倒くさい人だと聞いた。
”あの人”から。

この人があの木兎さんか~と思っていると、
音駒の黒尾さんに挑発された月島は結局第一体育館に入っていった。
変なことにならないといいけど・・・。
私が月島を目で追っていると、またニヤニヤした黒尾さんに話しかけられた。

「悪いねぇ、あっ見てく?」

「私はマネージャーの仕事残ってるので戻りますけど、月島とは本当にそんなんじゃないですよ・・・。」

「へぇ~じゃあうちの研磨にも脈ありってこと?」

「研磨ともそんなんじゃないで、す!
とにかく!黒尾さんくらいになれば分かってると思いますけど、
お願いします・・・月島。」

「いや~褒められちゃった?俺。」

「ほら、木兎さん待ってますよ。」

「無視?!」

「それじゃあ自主練頑張ってください。」

そう言って私は洗い場の方へ足を向けた。



――――――――次の日

昨日のことがあったので月島の様子を見たけど、
西谷先輩のやりとりとかを見ている限りあまり変わりはないようだった。
とりあえず一安心。


「森然高校の父兄の方からスイカの差し入れでーす!」

午後練の一番熱い時間帯に差し入れでいただいたすごい数のスイカをマネージャーのみんなで切って選手たちに配った。
皆それぞれなんとなく自分の学校の選手に渡しに行っていたので
私はマネージャーのいない音駒に、研磨あたりに渡しに行こうと思って向かおうとした時。

「ちょっと、どこいくの。」

「あぁ、月島。ほら、音駒はマネージャーいないし渡しにいこうと思って。」

そう答えると自分から聞いたくせに「ふーん」とだけ言って持っていたスイカを一切れ取られた。

「・・・まだ迷ってるでしょ。迷いまくってる。」

「・・・分かってる。」

「まぁ、あと5日あるよ。」

合宿に来るまではわずかにあったかもしれないこのまま続ける道も
合宿で皆の本気さを見てなくなってしまったことだろう。
このまま続けるならチームの膿にしかならないのだから、決めなければならない。

本当に、私が口出しできる問題ではないのだから、精一杯の励ましだった。
月島もそれが分かっているのか返事がなかったので、私は音駒の方に行こうと顔を向けた。

「わっ研磨。」

「ちょーだい。」

「俺も!!」

「う、うん。どうぞどうぞ。」

すぐそこに研磨が来ていた。
研磨と、確かリエーフくん。それと黒尾さん。

研磨とリエーフくんはスイカを受け取ると早々に日向くんのいる方向へ走っていった。
リエーフくんは2つ持って行った。元気だなぁ。

「おれも2つくらい貰おっかな。」

「ど、どうぞ。」

「・・・・・・。」

黒尾さんが取ると私がもっていた分のスイカは無くなった。
にしてもなんだこの空気。

「昨日はど~も。」

「・・・こちらこそ。」

黒尾さんは月島に意味深な挨拶をした後、澤村先輩の方へ向かっていった。

もう完全に、昨日なんかあったんじゃん。