URBAN FOLKLORE   

23



あの後は「ごめん、ありがとう。」と言って白河くんの手をどけて、すぐにレッスンに向かった。
それから夏休み。
私も何日か帰省して、これからの方針と決心を両親に告げた。
甲子園もテレビで見た。
みんなかっこよかった。
優勝は、できなかったけど。



それから、特に何もない。予想通り。
少し痛む心でクラスの友達と接して、旧体育館にも行かないから成宮くんと神谷くんとの接点もなし。
白河くんとも話をしていない。
廊下で成宮くんと神谷くんにすれ違ったときに、おめでとうって言おうとしたけど、果たしておめでとうでいいのか分らなかったから、少し困った顔で笑いかけるだけになってしまった。
学校全体では甲子園準優勝おめでとうって雰囲気だけど、当の本人たちが満足とは限らない。
というか多分、悔しい方の気持ちだと思う。
どれだけ強い心があれば笑顔で対応できるのだろうか。



こんな日々を送って、台風の時期になった。
今日は天気予報通りの大嵐。
これじゃあレッスン場にも行けない。
家で柔軟だけするのでもいいけど、大会が近いからできるだけ1日でも感覚を忘れたくない。
1時間、1時間だけ練習しよう。
そしたら雨風も少し静かになるかもしれないし。
そう思って旧体育館に向かった。
野球部も屋内練習なので周辺には誰もいなかった。
電気を暗めにすれば見つかって怒られることもないだろう。

…というのは間違った判断だった。
音も忘れて集中していた練習を止めて外の気配を感じると、今までよく無視していられたかと思うほどの轟音がしてた。
旧体育館にくるまでに濡れたからなのか、どこか体がだるくなる感覚がある。
いいや、練習していれば忘れられる。
少なくても嵐は今日の夜中には過ぎ去る予報だったはず。

私はまた判断を間違えた。
練習を再開した所からの記憶がない。
目が覚めると、見知らぬ天井があった。